近年、SNSやネット掲示板を中心とする誹謗中傷が大きな社会問題となっています。
とくに、有名人や芸能人に対して事実と異なる情報が拡散され、それが本人の人生に甚大な影響を与えるケースも少なくありません。
今回注目するのは、元フリーアナウンサー・高橋しげみさん（現在は天台宗僧侶「高橋美清」）が被ったストーカー被害と、その後に巻き起こったネット中傷地獄、そしてその渦中に名前が浮上した“児玉広志”という競輪選手の名です。
一部のネットでは、「高橋しげみが児玉広志をストーカーした」「逆に児玉が高橋をストーカーした」など、真偽不明の情報が拡散し、多くの憶測を呼びました。
本記事では、その経緯を丁寧に整理し、炎上の背景にあった真実と、誹謗中傷の恐ろしさについて掘り下げていきます。
■「ストーカー加害者」のレッテルを貼られた被害者・高橋しげみとは
高橋しげみさん（本名：高橋美清）は、長年フリーアナウンサーとして活躍してきた実績を持つ女性。
明るく知的な印象で、地方局やイベント司会など多方面でその声を届けていました。
しかし2015年、高橋さんの人生は大きく暗転します。
ある仕事関係者の男性から、執拗な連絡やつきまとい行為を受けた高橋さんは、ストーカー被害として被害届を提出。加害者の男性はストーカー規制法違反により逮捕されました（後に脅迫罪で略式命令を受けたと報道されています）。
ところが、その直後に思いもよらない事態が発生。加害者男性が不慮の事故で死亡してしまったのです。
一部メディアでは「事件を苦にして自殺か」といった報道もなされました。するとネット上では、「彼を自殺に追い込んだ女」「金を巻き上げた元交際相手」などと、被害者である高橋さんが“加害者”として炎上する事態に発展してしまったのです。
■ネットの中で「悪女」として拡散される恐怖
高橋さんの名前はすぐにネットで特定され、さらには実名・顔写真・経歴までが晒されるという悪質な誹謗中傷の連鎖が始まります。
SNS、匿名掲示板、まとめサイトには以下のような言葉が並びました。
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「男を騙した女」
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「今日は死なないの？」
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「お金を取って捨てた悪女」
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「クソババア」
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「早く死ね」
さらには、自宅に嫌がらせの電話や荷物が届くなど、現実の生活にも被害が及びました。
結果として、高橋さんは出演していた番組や新聞の連載もすべて降板。芸能界・放送業界から姿を消すこととなります。
その後、絶望の淵にいた高橋さんは自殺未遂を繰り返す日々を送りながらも、ある決断を下します。
■比叡山で出家――僧侶「高橋美清」として再出発
「このまま死んでしまったら、ネットに書かれた“罪”を認めたことになってしまう…」
高橋さんはこのような思いから、生きる道を模索し、比叡山での修行を経て、天台宗の僧侶「高橋美清」として出家することになります。
心を癒やし、内面と向き合うために仏門へ――。
これは単なる逃避ではなく、「同じように誹謗中傷に苦しむ人のために何かしたい」という強い使命感からの決断でした。
■加害者を「特定」するまでの執念と闘い
誹謗中傷を繰り返していた投稿者の中に、執拗に「首を吊らないのか」などと書き込んだ悪質な人物がいました。
高橋さんは個人で情報開示請求を行うも、プロバイダーは非協力的。弁護士を通してもなかなか進展しませんでした。警察も当初は「有名税だから」と相手にしなかったといいます。
しかし、地道に資料を集め、ようやく警察が動いたのは事件から3年後のこと。
結果、投稿者は40歳前後の国家公務員の男性であることが判明。しかも過去に放火予告で逮捕歴がある人物だったのです。
■加害者の驚くべき言い訳「悪気はなかった」
警察から事情聴取を受けた加害者は、自らの書き込みを認めました。
しかし、弁護士を通して送られた示談交渉の手紙には、次のような信じがたい言い訳が綴られていたといいます。
「ネットで多くの人が書いているから、自分も書いてしまった。悪気はない。」
このような無責任極まりない言い分に、高橋さんは怒りを禁じ得ず、「示談は一切しない」と断固拒否。最終的に名誉毀損での刑事告訴へと至ったのです。
■「駆け込み寺を作りたい」――誹謗中傷のない未来のために
現在、高橋美清さんは僧侶として活動する一方、誹謗中傷に苦しむ人たちを支援するための「駆け込み寺」を設立する計画を進めています。
彼女の言葉には、実体験に基づいた重みと説得力があります。
「ネットでの中傷は“言葉の暴力”そのものです。法律があっても、実際に守られるには多くの困難がある。私はその“最前線”を体験しました。だからこそ、同じように苦しむ人たちの居場所を作りたい。」
■高橋しげみと児玉広志の関係は？デマ拡散の現実
さて、一部ネット上で噂された「競輪選手の児玉広志がストーカーの相手だったのでは？」という説ですが、これは誤情報である可能性が極めて高いです。
高橋さん自身が名前を明かしていないにもかかわらず、「群馬県在住の競輪選手だった」「児玉広志という人物だった」といった情報が流れた背景には、匿名掲示板などでの無責任な憶測や誤解が飛び交ったことがあると考えられます。
このように、真実でない情報がまことしやかに語られ、一人の人生を破壊する事態に繋がることこそが、ネット時代の最大の恐怖なのです。
■まとめ：誹謗中傷の「加害者」にならないために
高橋美清（高橋しげみ）さんの一連の体験は、単なる有名人の「炎上事件」ではありません。これは、誰もが「被害者」にも「加害者」にもなり得る時代の、痛切な警鐘なのです。
私たちは、ネットで情報を目にするたびに、「これは本当に事実なのか？」「自分の発言が人を傷つけることはないか？」と自問する必要があります。
高橋さんのような痛みを、これ以上誰にも背負わせないために。
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