2025年6月11日、北海道演劇界の第一人者として知られた俳優・劇作家・演出家の斎藤歩(さいとう・あゆむ)さんが、60歳という若さでこの世を去りました。
訃報は、まさに演劇に捧げた人生の幕引きそのものでした。この記事では、斎藤歩さんの妻・西田薫さんとの関係やお子さんの有無、そして死因となった癌との闘病生活について詳しくご紹介します。
■斎藤歩さんのプロフィールと功績
斎藤歩さんは1964年12月20日、北海道釧路市に生まれました。幼少期には父の転勤により本州へと移り住みましたが、後に父の母校である北海道大学に進学。
そこで演劇と出会ったことが、彼の人生を大きく変える転機となります。
当初は地質学に興味を持ち科学者を目指していたものの、大学時代に出会った「北大演劇研究会」や「驪団(りだん)」のテント公演に強く惹かれ、演劇の道へと進む決意を固めました。
その後、大学は中退するも、演劇活動を本格化。札幌を拠点に舞台・テレビ・映画など幅広く活躍し、文化庁芸術祭・演劇部門優秀賞や札幌芸術賞など、数々の賞を受賞。北海道の演劇シーンにおいて“顔”とも言える存在でした。
また2020年からは、北海道演劇財団の理事長を務め、演劇を通じた地域文化の振興や後進育成にも尽力してきました。
■妻は女優・西田薫さん 支え合い続けた夫婦の姿
斎藤歩さんの妻は、女優の**西田薫(にしだ かおる)**さんです。
彼女もまた北海道を中心に演劇活動を行う舞台女優として知られており、夫婦でありながら時には同じ舞台に立ち、創作活動を支え合ってきました。
2024年2月には、HTB(北海道テレビ放送)が制作したドキュメンタリー番組『生ききる~俳優と妻の夜想曲』が放送されました。
番組では、癌に侵されながらも舞台に立ち続ける斎藤さんと、それを献身的に支える西田薫さんの姿が克明に描かれており、多くの視聴者の心を揺さぶりました。
番組中、西田さんは「まだ現実を受け入れきれていない」と語り、夫が病と向き合いながらも変わらず前を向き続ける姿に対し、深い愛情と戸惑いを見せていました。
まさに“生ききる”という言葉がふさわしい、静かで力強い夫婦の絆がそこにありました。
■お子さんはいるの?
斎藤歩さんと西田薫さんの間にお子さんがいるかどうかについては、公式には公表されていません。ドキュメンタリーや各種報道でもお子さんに関する情報は明かされておらず、夫婦二人三脚で演劇に取り組んできた様子が強調されています。
そのため、お子さんはいない可能性が高いと見られていますが、プライベートな部分については本人たちが語ることなく人生を全うされたため、真相は不明です。
■死因は尿路上皮がん 約4年間の闘病生活
斎藤歩さんの**死因は「尿路上皮がん」**でした。これは尿管、膀胱、腎盂など尿の通り道にできる癌で、進行が早いケースもあります。
斎藤さんが病を発症したのは2021年。医師から余命半年と宣告されたのは2023年のことでしたが、それでも彼は演劇を止めることなく、最後の最後まで舞台に立ち続けました。
亡くなる当日である2025年6月11日も、北海道演劇財団の理事会に出席予定であり、理事長退任の手続きも予定されていた日でした。結果的にその理事会の場で、訃報が伝えられるという皮肉な結末となりました。
副理事の秋山孝二さんは、斎藤さんについて「最後の最後まで舞台に立っていた、本物の演劇人だった」と語り、その生き様を称えました。
■密着取材した友人・沼田博光さんが語る“生ききる”姿勢
ドキュメンタリー『生ききる~俳優と妻の夜想曲』の取材を担当したのは、HTB報道デスクの沼田博光さん。学生時代に斎藤さんと出会って以来、40年近い交流を続けてきた親友です。
斎藤さんが癌で闘病していると知った沼田さんは、「命を削って舞台に立つ姿を報道として美化したくない」と葛藤しながらも、カメラを回し続けました。そこには、ただ芝居を愛し、命の終わりまで演劇を生きた一人の表現者の姿がありました。
その中で見えてきたのは、「死」を特別視せず、日常の中で淡々と受け入れていく姿。西田薫さんとの会話も、あくまで自然で、痛みや寂しさを包み込むような優しさがありました。
■北海道演劇界が失った巨星
斎藤歩さんは、北海道における演劇文化の中心人物でした。特に「札幌座」のチーフディレクターとして多くの舞台を手がけ、若手の育成にも尽力してきました。
彼がいなければ、北海道の舞台芸術は今とはまったく違う姿になっていたことでしょう。北海道演劇財団では、後日**「お別れの会」**を開催する予定とのことです。多くの人が、その生き様と作品を胸に、感謝と別れを告げることでしょう。
■まとめ:人生を懸けて“演劇を生ききった”斎藤歩さん
斎藤歩さんは、最後まで「表現者」として生き抜いた人物でした。死を前にしても芝居をやめることなく、「生ききる」という姿勢を貫いたその生き様は、多くの人に勇気と感動を与えました。
彼の傍には、常に妻・西田薫さんの存在がありました。静かに、しかし力強く支え続けた夫婦の姿は、ドキュメンタリーという形で永く語り継がれることでしょう。
彼の訃報に際し、ただ「悲しい」では語り尽くせないものがあります。斎藤歩さん、素晴らしい演劇人生をありがとうございました。安らかにお休みください。
コメント